YouTubeやSNSで『ヒューマンビートボックス(ビートボックス、Humanbeatbox)』という言葉を目にしたことはありませんか? 「なんだかよく聞くな」と思いつつ、実際は「よくわからない」という人や「ボイスパーカッション(ボイパ)の事?」なんて人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、このヒューマンビートボックスについての紹介と、注目されている理由、そしてチェックしておくべき有名ビートボクサーなどを徹底解説します!

ヒューマンビートボックスとは?

ヒューマンビートボックスとは、楽器を使わず主に口から出る音で音楽を演奏する技法・音楽ジャンルのことを指します。

ヒューマンビートボックスの大きな特徴は、見る人を驚かせるパフォーマンス性の高さです。ヒューマンビートボックスではドラムパーカッションといった音だけでなく、シンセサイザーによる電子音や、ライブやクラブでの演出における音なども表現し、楽曲を構成します。

「え! これ本当に人間が出しているの? 」なんて驚きもあり、YouTubeに上がっている動画をみていると、聴覚だけでなく視覚的にも楽しめるでしょう。

また、一般的な楽器は演奏方法を習得する事で、ある程度同じ音が出せるようになるものですが、ビートボクサー(ヒューマンビートボックスのプレイヤー、アーティスト)は個々の人間として体の構造が違い影響する事もあって、同じ技術を習得しても音色に違いが表れやすいという特徴があります。

つまり、『その人にしか出せない音』が理解しやすく、演奏側にとっても鑑賞側にとって奥深い音楽ジャンルともいえるでしょう。

たとえば、このHUSKEYというユニットの動画を見ていただくと、どんなものか理解しやすいかもしれません。

『ヒューマンビートボックス』と『ボイスパーカッション』の違い

口で音楽を演奏する技法としては、『ボイスパーカッション(ボーカルパーカッション/ボイパなど)』も有名ですよね。 実際「ヒューマンビートボックスはボイパと何が違うの? 」と疑問に思っている人もいるでしょう。

ヒューマンビートボックスとボイスパーカッションの主な違いは以下のような点です。

  • 一人で担当する音色の種類
  • 文化や演奏スタイル
  • 演奏する人数

一人で担当する音色の種類

ヒューマンビートボックスとボイスパーカッションの大きな違いのひとつとして、一人で担当する音色・パートの数が挙げられます。

ボイスパーカッションでは基本的に、ひとりでひとつの音色。 とくにドラム&パーカッションというリズム系打楽器を表現するのが基本。一方でヒューマンビートボックスの場合は、ひとりで何種類もの音色・パートを表現して楽曲を作り上げるのが一般的。ギター、トランペット、ベース、シンセサイザー、ドラム……と、ひとりで複数のパートを奏でるなんてこともよくあります。

今や大人気YouTubeとなったHIKAKINが2010年にアップしたビートボックス動画ですが、大人気ゲーム『スーパーマリオ』のBGMをビートボックスアレンジして公開しています。

リズム、効果音(SE)、メロディーを一度に演奏していて、さまざま音の同時演奏という意味が把握しやすいのではないでしょうか。

公開日は、なんと2010年の6月! 当時この動画をみていたキッズ達が現在の日本でのヒューマンビートボックスシーンで活躍しているという事実もすごい事です。

文化や演奏スタイル

ヒューマンビートボックスとボイスパーカッションでは、その発祥ゆえの演奏スタイルも大きく違います。

ボイスパーカッションはアカペラ(a cappella=声だけで構成する歌唱方法)発祥といわれており、複数人で構成する楽曲の1パートとして発達してきた技術です。

たとえばこの動画などは。 アカペラ構成の演奏中でマイクを持っているメンバーがボイスパーカッション担当なので分かりやすいでしょう。

一方で、ヒューマンビートボックスはヒップホップ文化から発生してきたという背景もあり、パフォーマンス性も重視されています。結果として、ヒップホップのラップバトルや、ダンスバトルのようにビートボクサー同士で戦う『ビートボックスバトル』といった事も行われています。

GBB(グランド・ビートボックス・バトル)という、世界的な大会の様子を見ると、理解しやすいと思います。/

また、ヒューマンビートボックスでは、ループステーションという機材を用いてビートを機械的に繰り返したり、重ねたりといったライブスタイルも存在します。

このあたりは、アカペラベースの1パートであるボイスパーカッションと、1つのジャンルとして広がりつつあるヒューマンビートボックスの違いが分かりやすいでしょうか。

演奏人数

先ほどの動画例にもわかるとおり、演奏人数も異なります。 ボイスパーカッションは基本的に複数人で構成するアカペラ形式で、ひとつのパート(主にドラムやパーカッション)を担当します。

そして、ヒューマンビートボックスはひとりで何種類もの音色を使い分けて、楽曲を完成させるという傾向があります。繰り返しになりますが、シンセサイザーやギターといったメロディ、ときにはボーカルやMCまで含めて、楽曲をひとりで完結させるのがヒューマンビートボックスです。

……とはいえ2人や3人以上で構成されるヒューマンビートボックスユニットというスタイルもありますし、アカペラユニットで活躍するビートボクサーや、ボイスパーカッションも行うビートボクサーといった方も居て混乱してきそうですが……あまり深く考えず基本的にはちょっと違う、程度に認識しておいても良いかもしれません。

ヒューマンビートボックスの注目度が上がっている理由

日本では2021年12月現在、YouTubeやSNSを中心に空前のヒューマンビートボックスブームが到来しつつあります。人気が急上昇している理由としては、以下の2つが中心でしょう。

  • 日本の若手ビートボクサー(※)が世界で活躍中
  • 2人組ヒューマンビートボクサーのYouTuber「Rofu」の台頭

※ヒューマンビートボックスのパフォーマンスを行う人のこと

日本の若手ヒューマンビートボクサーが世界で活躍中

日本の若手ヒューマンビートボクサーが世界で活躍したことで、音楽ジャンルとしての知名度が上がっています。

特に、2021年10月にポーランドで行われた『GBB(グランドビートボックスバトル)2021』にて、日本人が1位を含む好成績を収めた事は記憶に新しいところでしょう。

  • GBBWL 2021 ループステーション・タッグ部門 優勝 SORRY(SO-SO and RUSY)
  • GBBWL 2021 Crew部門 準優勝 SARUKANI(SO-SO, RUSY, Kohey and Kaji)
  • GBBWL 2021 タッグ部門 3位 Rofu (HIRO and Fuga)

出典:GBB公式サイト Grand Beatbox Battle 2021 Winners

世界中のヒューマンビートボクサーが出場を目指すトップレベルの大会で、初の日本人優勝が生まれた事もあって一層の盛り上がりを見せています。 またこれに伴ってメディアでの露出も増え、日本テレビの人気番組『スッキリ』でSARUKANIがパフォーマンスを披露しました。

世界での活躍をきっかけにして、これまでヒューマンビートボックスをまったく知らなかった層にも輪が広がっているんですね。

2人組ヒューマンビートボクサーYouTuber『Rofu』の台頭

ヒューマンビートボックスの盛り上がとしてYouTubeでの『Rofu』の台頭を抜きに語れません。

『Rofu』は日本を代表するヒューマンビートボクサー『HIRO』と『Fuga』によるタッグチームです。彼らはコロナウイルスの影響で活動ができなくなったことをきっかけに、YouTubeでヒューマンビートボックスの布教活動をはじめました。

ヒューマンビートボックス愛を感じる解説動画や、業界のレジェンドたちとのバトル動画を多数アップしたところ、瞬く間に人気が急上昇。チャンネル開設が2019年5月ながら、2021年12月時点でチャンネル登録者数は54万人を超えています。

前述のとおり『Rofu』はGBB 2021でも、タッグ部門3位を獲得しています。彼らのパフォーマンスを見るため、リアルタイムでGBBを視聴したファンも少なくありません。

『Rofu』がこの記事の序盤で紹介したHIKAKINのビートボックスを解説する動画も見ごたえがありますよ!

ヒューマンビートボックスブームはまだまだ続く!

当記事では『ヒューマンビートボックス(ビートボックス)』につて、『ボイスパーカッション』との違いを交えつつ、その基本や魅力を紹介しました。

ヒューマンビートボックスは主に口から出る音で演奏する技法ですが、昨今は日に日にジャンル全体の盛り上がりを感じています。今後もさらに熱狂の渦が広がっていくことでしょう。

本記事を読んでもっと知りたくなった人は、ぜひ今回紹介した動画やYouTubeチャンネルをはじめ、ヒューマンビートボックス動画で、奥深い魅力を楽しんでください!